
行事紹介
この度は寮生ゼミという形で、この松尾育英会学生寮を再訪できたことを非常に光栄に思います。ここを訪れると、今から約8年前、希望と不安を胸に広島から上京したときのことを昨日のように思い出します。思い返せば、ここには私の学生生活の思い出がたくさん詰まっています。素晴らしい同期、尊敬できる先輩、可愛い後輩との出会いはもちろんのこと、秋旅行やすきやき、焼肉、ボウリング大会など、さまざまなイベントがありました。受付や朝チャイムを鳴らす当番、委員会活動など、寮生全員で一つの小さな社会を作り上げたことは、社会人になった今でも生きる貴重な経験だったと思います。
さて、私自身もこの寮で生活していた当時は、この生活を少し当たり前に感じたり、少しルールが厳しいなと感じたりすることもありました。ですが、改めて在寮生の皆さんには、この環境がいかに恵まれているかということを認識いただきたいと思います。
例えば、学費、生活費、交通費など金銭的な負担が全くない中で大学生活を送れる人は日本の中を見てもほとんどいないと思いますし、寮に帰れば朝夕の食事が用意され、昼食費まで出してもらえる、こんな環境世界中を見てもこの寮で生活している20人そこそこの人に限られていると思います。この環境をどう生かすか、どのように実りある4年間にしていくのかは、在寮生の皆さんの一人一人の心がけに全てかかっています。かくいう私も、今振り返れば、この金銭・時間的にも恵まれた4年間の間に、もっと深めておけばよかったと思う知見やスキルもあります。
社会人になってからは、自分が7年後にどんな姿になりたいか、そしてそのためには今、次の2年でどんな経験やスキルが必要かを常に考えさせられます。もちろん、大学生にとっては、就活、院試などさまざまな分岐点、無限の可能性があり、なかなか長期的な未来は不透明で、考えにくいものかもしれません。しかし、漠然と目の前の事象・興味、そして素晴らしい寮生活を楽しみつつ、ときには何をこの4年間で自分は成し遂げたいのか、どんな姿になりたいかを考えていただくことで、後から振り返った時に、より意義のある時間となるのではないでしょうか。
6年前、総務委員長として、卒入寮式で話した式辞を振り返ってみました。
当時、新しい元号、今で言う「令和」が発表される前日、あと一か月で「平成」も終わるタイミングでした。その時にも、「いろいろな物事が移り行く中で」とコメントしましたが、この6年でも多くのものが変わってきたと思います。
十条駅前も再開発で景色も大きく変わり、当時多くの寮生が通い詰めた、駅前のキングケバブの店舗も無くなりました。先輩の紹介でよく通っていた、高田馬場の「つけ麺高木屋」も無くなりました。(早稲田にはまだありますが)寮のルールも門限を筆頭として、より現代の大学生のスタイルに合ったものに変わってきたと思います。
その式辞で述べた、「いろいろの物事が変わりゆく中で、この寮も変わらないもの、変えるべきものをしっかりと吟味してより良い環境を作り上げていってほしい」、この私の想いは卒寮した今でも変わりません。ぜひ在寮生の皆さんで、この松尾育英会学生寮の歴史の重みを感じながら、寮生として、そして個人としてどう変化・成長し、社会に恩を返すことができるのか、考える機会にしていただければと思います。